第二章其の弐
絶望的な出来事について。

旅行はホントに楽しかったです。
今となってはほろ苦い思い出ですが行けて良かったと思います。

実は旅行に行く前に、
「旅行が終わるまでに俺かIかどちらか選んでくれ」
というなんとも無茶な約束を交わしていました。
あ、Iと言うのは、彼女の現彼氏です。

ですが、その約束は果たされませんでした。
電車の中で、決め切れていないと言われました。
それは仕方のないことだと思っていましたが、内心カナリ凹んでいました。
美恵子に慰められて、ちょっとだけ泣きました。

旅行が終わってからも、ちょくちょく会っては他愛のないデートを繰り返しました。
それは、果たされなかった約束の答えを聞くためでもありました。


ある日、僕にとって聞きたくない答えを聞いた日。
僕は自転車で転びました。
うわべでは平静を装っていましたが、大きく動揺していたみたいです。

たいしたことはなかった筈なのですが、頭がくらくらして不安になり、
親に内緒で病院にいきました。

なにやら大げさな検査をしました。初めてCTスキャンを経験しました。
さまざまな検査の結果、医者が導き出した答えは、

「脳血種」

と言うものでした。
転んだ際に、後頭部を強く打ったのが直接の原因ですが、
ストレスにより、血種の元が沢山できているとのことでした。

脳幹の奥に出来ているために手術が難しく、失敗は死を意味しているので、
手術は断念し、放射線による治療と薬で少しづつ抑えていくとのことでした。

その間、ストレス、大きな音、激しい運動は控えるようにと言われました。
特に、ストレスを与えて血種が破裂すれば、命の保障はないとのことでした。

…

…


僕はすべて上の空でした。
僕が死ぬ?たかが自転車で転んだ程度で?

有り得ないほどに動揺していました。
美恵子にも大きな不安を与えました。
二人で暮らしだしたから数ヶ月。色んなことがあって、
やっと美恵子自身、現代を楽しみ、生を謳歌し始めたころでした。

幸せに向けて動き出していた人生が一転、絶望に変わりました。

続きはまた次回…
目次
第一章其の壱

第一章其の弐

第一章其の参

第一章其の四

第二章其の壱

第二章其の弐

第三章其の壱

第三章其の弐

第四章其の壱

最終章